鎖に縛れたお姫様
なんで通話ボタンを押しちゃったんだろう。
いつも通りの、ぶっきらぼうで、明るい声が聞こえてくる。
「こ、こんにちは?」
『おい?何だよしんみりした声だしやがって。つーかさっさと学校こいや。
調子のってんじゃねえぞ』
心臓が震える。
きゆっと声を強く保つ。
「のってないよ。しんみりもしてないしね。元気いっぱいだ、こっちは」
『・・・・・ブス、泣いてんのか?』
そう言われて、慌てて目にたまってる涙を指ですくった。
何でこういう時だけ鋭いんだろう。
今、あたしの目の前にいるわけでもないのに。
「ま、まさかあたしが泣くわけないじゃーん!笑ってるよ、大笑いの真っ最中だ よ!」
『じゃあ、笑ってみろよ』
「・・・・・」
輝の低くて、少しもふざけてない声が聞こえる。
・・・・・笑えない。
笑えないよ。
今は嘘でも、笑えない。
だからこうしてわざわざ外に出て来たんだから。