鎖に縛れたお姫様
もう、いろんなとこの感覚がない。
頭も全然働かない。
ただ、涙だけが出てくる。
ぬぐっても、ぬぐっても。
・・・・・泣きやまなきゃ。
泣きやもう。
ほら、大丈夫。
頑張ろう、立とう。頑張れ、頑張れあたし。
―――でも、そう思えば思うほど涙はよけいに止まらなくなる。
その言葉を頭に浮かべるだけで、あたしの中の何かがチクチク痛む。
――――けど、
「おい、ブス」
すぐ近くから息切れしてる声が聞こえてきたから、あたしはその言葉を思い浮か べるのを止めた。
暑い昼、聞き慣れた声が響く。
こんな場所には似合わないようなぶっきらぼうな声。
でも、優しい。すごく。
「俺が来るまで泣くんじゃねえっつったろーが。アホ」
――――そう言いながら輝は、いつものようにあたしに暴言を吐く。