鎖に縛れたお姫様





瞬きする度にこぼれ落ちる私の涙を、輝は指でぬぐう。



輝は信じられないぐらい優しく私に触れる。




「この古傷、どうしたんだよ」



私の乱れた前髪を整えながら、輝は鋭い目つきで傷ついている首元を見てふと、 手を止めた。

鋭利な刃物みたいな目。ただその傷一点に注目してる。




それはね、私の‘未来の旦那様’にやられたんだよ。




そう言ったら凪は笑うかな?



おまえが結婚かよ!みたいな。


どうせなら思いっきり笑い飛ばして欲しい。



今、輝のあの果てがないような笑い声を聞いたらまだもう少し、今日、頑張れそ うな気がする。



―――でも、言える訳ない。



「誰かにやられたのかよ」


凪の低く、暗い声に私は首を振った。



「本当の事言え。誰にやられた?」



また、私は首を振る。



・・・・言えないよ、言えないんだよ、輝。



今はまだ、言えないんだよ。



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