鎖に縛れたお姫様
「……」
「…どうした?」
急に黙ってしまった私を見てか覗き込んでくる。
「あの…」
「ん?」
「私は…何か、あったんですか?」
嫌なこと考えると、何かモヤモヤして落ち着かない。
それは、私が思い出すのを恐れているから…だろうか。
「なにか…って、なに?」
「思い出したくない…何か」
「……さぁ?」
昂が分からないのも無理はない。
私ですら、分からないから。
どうしても思い出そうとすると、思い出したくないと思ってしまう。
もう、記憶も戻らなくてもいい。
それはまるで、思い出してはいけないかのように、考えを強制的にストップさせ る。
嫌な、感じ。
だけど、大切な何か
思い出したくないけれど、忘れてはいけないもの。
そこまで分かっているのに、どうして思い出せない?
「私、嫌だけど思い出したくないけど…、忘れてはいけない何かを忘れてる …」
「なにかって、何?」
「わからない…、でもっ、忘れたくないものがあるの…」