医師とわたしの恋物語
寝不足なのに、これまでの緊張感が勝ってて寝付けなかった。



しばらくして、私が寝返りを打つと



先生が私の横になるベッドに歩み寄った。




「めまいは落ち着きましたか?」




医師の言葉が聞こえ、私は仰向けになった。



白いカーテンの開いた窓から


夕日が差し込んでいる。



診察室は夕日に染まっていて



医師の白衣も黒髪も、夕陽色に染まっていた。



ベッドに寝たままの私は



黙り込んだまま



心配して覗き込んむ医師の顔を


じっと見つめる。




私は、医師のマスクにそっと手を伸ばした。




マスクに近付く私の右手を、医師は優しく掴む。



医師は片手にカルテを持っているため、両手が塞がっていた。




私はめげずに、左手を伸ばして



医師のマスクに指を掛けた。





静かに医師との視線が絡み合う中




私はそっと、医師のマスクを外した。





ドキっとした。





私のイケメン像をはるかに上回ったイケメンが

そこに居た。




医師の素顔があんまりにカッコ良くって



私は瞳を大きく見開いたまま



医師を、ただただ見つめる。



少し寝れたから私の精神が回復していて


イケメンに対して胸が高鳴るほど元気になった。



ドキドキがばれてしまうと思った。






私を見つめる先生の表情に


今まで出あったことのない位の



大人の男性の魅力をたっぷりと感じ




心が


強く惹かれた。





ベッドに横たわったままだった私は


ゆっくりとベッドから躯を起しながら



淡い夕日に照らされている医師に顔を近寄せる。




白衣と制服が触れ合うほどの距離になって



私は、医師の唇を目前に



そっと、目をつぶった。







ピタッ。




唇に



固い感触があった。

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