医師とわたしの恋物語
そっと目を開くと



私は……





自分のカルテとキスをしてた。






そして、身代わりにカルテを利用した医師は……





まるで、何事も無かったように



私がキスをしたカルテを開いて


記入を始めた。




……。




先生の、心の中のカルテにも



私の事を刻み込んでください。




なんて、おバカな事を考えながら





医師の端整な横顔を見詰める。




夕日もさしていい雰囲気だと思ったのに


今は誰がどう見ても完全に、単なる患者と医師だった。



ガックシ……。




「木ノ下さん、診察の結果ですが。」



私の立ちくらみは治まっていて


すっかり医師の口調に戻った先生は



スラスラとカルテを書きながら結果を告げた。



「今のところ、妊娠は陰性です。ただ、月経が来るまでは様子見ですね。」



私は様子見という言葉に、呆然としながらうなずいた。



医師はスラスラとカルテを書きながら、結果を続ける。



「性病の検査結果は来週出ます。結果を聞きに、また来てください。」



カルテをパタンと閉じると



医師は胸ポケットにペンをしまいながら




「それと。」



医者らしい表情で私を振り返った。



何度見てもイケメンだった。



見とれていた矢先




「炎症がみられるので、しばらく控えてくださいね。」




ときめくカラダにそんな診断が下された。



先生にはキスから逃げられちゃったし


生理が来るまで妊娠の可能性は消えてないし。



私は気落ちしながら


無心のようにベッドから降りた。



スカートの中にはまだ下着を履いてなかったから


太ももに、何かが伝わるのを感じた。



な、なに!?



急に自分に起こった出来事に焦った私は



医師に見られないうちに


診察台の荷物置きへと急いだ。



ポタッ。



動いた拍子に、床に垂れたてしまったものに


医師の視線が向いた。




出てきたっ!



泣きそうな顔で


荷物の置いてある診察台のカーテンの中に逃げ込んだ。




「あ、良かったですね。」




医師の声がした。



また、ポタリと垂れた液体に、私は視線をむけた。




私は


たった今、生理を迎えた。



何も言えずただ黙りこんで

私は真っ赤な顔をしながら



自分で始末した。



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