医師とわたしの恋物語


サイドにあるモニターに、私の体内エコーが映された。



シャッと、カーテンが開かれ


モニター画面を見る医師が現れた。



表情は真剣そのもので



慣れた手つきでカメラを左右に動かす。




モニターは白黒で、初めて見る私には何が何だかよくわからない。


どれが影でどれが胎児なのかわからない。




赤ちゃんが居たり卵巣嚢腫などの腫瘍が有った場合



このモニターに真黒い丸が映るという。



実際に、医師は他の人のエコー写真を私に見せてくれた。



それは写真サイズより小さな印刷用紙で


ズームにされた一つの黒い丸が本当にはっきりと映っていた。




私のエコーは……




視線を画面に戻す。



緊張に固く握りしめていた両手は


冷たすぎて感覚を失っていた。




もう、かさかさになった唇は、真っ青だと思う。




判決が下るのを待つ囚人のように怯える私の傍ら


エコーを隈無く確認した医師は



画面を見ながら頷いた。






「映ってませんね。」






明るい声で



そう呟いた。






「尿検査も陰性でしたので、恐らく今の所はまだ妊娠はしてません。」




穏やかに告げられた。




5秒くらい遅れて



私の脳が医師の言葉を認識した。



すると、張りつめていた糸がふつりと切れる。




「痛みが有るという事なので、性病検査 もしておきますね。」



医師の言葉に



私は、また両手を握り締めて


ギュッと目を閉じた。




これは、2回くらい少しチクッとしたけど


すぐに終わった。




別に注射とかされてる訳じゃなくて



器具が擦れるような痛みだから

そんな痛みはすぐに忘れた。



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