医師とわたしの恋物語
私を寝かせた診察台が、椅子の形に戻った。



医師が私の膝にかけてくれた、病院のタオルをつかみながら



私は放心状態だった。




一気に気が抜けた。




妊娠してなかった喜びよりも



逆にほっとしすぎて、腰を抜かしたように


動けなくなってしまった。




まるで命を救われたようだ。



安心すると腰が抜けるなんて


初めて経験した。




こうして思考回路が停止するなんて、思っても見なかった。




「彼氏さんは、避妊なさらないんですか?」



閉められたカーテンの向こう側で、片付け作業をしながら


医師がさりげなく問いかける。




問診の時の私は


避妊はしたけど生理が来ないから心配で。



って嘘をついたけど



それが嘘だと言うことは、場数をこなした医師には当然のようにバレてた。




答えられずに居ると



医師は、カラダの仕組みについて話し始めた。




基本、排卵は月に1度だけど



生理が規則的でも、まれに別の日に排卵してしまう場合もある。



だから、一度でも避妊していなければ妊娠の可能性は十分に有るという。

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