時の流れで、空気になる【短編】
そういえば、サツキは高校時代、陸上部だったと言ったっけ。
追いかける気なくして、俺は佇む。
夜の闇に向かって、わざとらしく溜め息をついた。
あとでメールをしないと、サツキはむくれるだろう。
曖昧なことが嫌いな女だ。
分かってる。
もう5年も付き合っているのだから。
いつ頃か、
サツキは「結婚しよう」という俺の言葉を待っている、と気付いた。
プライドの、高い女だ。
自分からは言わない。
サツキの願望を俺はスルーし続けている。
倦怠期と、いうやつなのかもしれない。
「俺はお前のこと、好きなのかどうか分からない…」
知らず知らずのうち、呟いていて、ハッとした。
やっぱ、倦怠期なんだろうな。
右手で頭をガシガシやった時。
「あっ…」