【完】君と、前へ。
___________…
あの時の漆黒に近い海の中、
2人の針は止まった。
たくさんの涙が流れた
後悔ばかりが心に絡みついた
奥深い絶望もした
…けれど、時とは残酷で、
とても優しかった。
2人は誓い合った印の輪を外して
海の針が動き出すように、私の針も
それぞれの針はそれぞれのペースで
動き出したのだった。
私は、前へ進むように2人の輪を売って
自分が綺麗になるために使った。
心の中と同じように髪を明るくし
自分の生活と同じようにパーマをかけ、緩くした
雑誌なんか買っちゃって、一生懸命になって…
新しい土地で、多くの人と触れ合って
あの頃とは違う景色が見れた。
傷ついた私の心を癒して来た…、けれど……
「……暗く、なってきたね。」
外で必死に訴えるように鳴く蝉の声に耳を傾ける。
「…海斗、ちょっと"あの場所"に行こうか。」