正義のヒーロー
現実直視者
「水嶋。君を呼んだのは他でもない」
「はい。わかっています」
何人何十人、何回何十回、あらゆる人に言われ続けたから…。
それこそ耳にタコができるくらいに、みんな同じことを言う。
「君の幼なじみの朝日奈のことなんだが…。今日の進路希望調査にこんなことを書いてね」
手渡された調査書には、朝日奈特有の綺麗な字ではっきりと書かれていた。
第一希望、その他
正義のヒーロー
または悪の組織(幹部)
馬鹿だ、コイツ。
私も何回何十回、いや何百回思ったことか!
「できれば彼にもっと現実を見てもらえると嬉しいんだがねぇ」
ため息混じりに言う先生に、本気で同情する。
ただでさえ三年の担任は忙しいのに、クラスに幼稚園生並の思考を持った生徒がいるなんて…。
ある意味、進学校を決めていない生徒より厄介だ。
「分かりました。私があいつを正常な人間にしてみせます!」