正義のヒーロー
「いでっ!」
「わっ、ごめんなさい」
触られたことにより、思っているより重傷なのかもしれないと気付いた。
男の人の指先にうっすら血が付いていた。
「ごめんなさいっ。今拭きますから、じっとしていてくださいね」
男の人は真っ白いタオルを取り出して、また僕の頭に触れた。
もちろん痛みはひどいけど、好意の上での行動なので文句は言えない。
「ねぇ、何が当たったの?」
「ボールですよ、野球ボール。しかも硬式」
「あー、近くで野球してるもんね」
止血のためにか、最後にタオルを巻かれた。
がっちりとキツク絞められたから、また痛みに襲われる。
「はい。最後の最後で、場外満塁ホームランを打たれてしまいまして…。罰としてピッチャーの私がボールを捜す係になりました」
「それは悲惨だったね」
「悲惨なのはアナタに当たってしまったことですよ…。本当にすいませんでした」
何度も頭を下げる男の人を見ながら、何かが突っ掛かる。