正義のヒーロー

「アンタの名前は?」
「わ、私ですか?…太陽と申します」
「じゃなくて名字」

正直、名前は?と聞いて名前だけが返ってきたことは初めてだった。
物腰が柔らかいだけじゃなくて、実は天然も入っているのかもしれない。

「名前を名乗る主義なのですよ。その方がお近付きした気がしませんか?」

爽やかに笑う男の人の顔を見ているとそのような気もした。
だからあえて何も言わずに、太陽さん、と返しておいた。
そうしたらまた、爽やかにはい、と返されてしまう。

「僕は如月。それじゃあ行こうか、太陽さん」
「え、はい?本当に行くのですか?相手の方は代打で、知らな…」

「関係ないよ」

太陽さんの言葉を遮って、無理矢理に歩みだす。
僕より身長が高い太陽さんは、フラフラとついてきた。
納得がいっていないようだったけど、握った腕は振り解かない。
言葉では反論するけど、押しには弱いタイプだと思った。




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