正義のヒーロー
「………どういうこと?」
「きっと置いていかれたのでしょうね」
グランドへ着いた僕たちを迎えたのは、無人を告げる風だった。
「代打の人どころか、誰もいないじゃん」
「随分遠くまで、ボールが飛んでいったということですよ」
太陽さんが、あまりにもさらりと言う。
たぶん初めてのことじゃないんだろう。
心が広い分、何をされても許されると思われているのかもしれない。
「どうしようかなー。これじゃあバッターに謝らさせれない」
「…そうですね」
隣でガサガサと音が聞こえた。
「どうしたの?」
「これ、見てください」
太陽さんはちょっと黄ばんだ、皺くちゃの紙を持っていた。