正義のヒーロー

「人のことじぃーと見て、どうした?朝日奈くん」
「な、なんで俺の名前を…」
「俺はヒーローなんだぜ?市民の名前くらい把握している」

そして男はだんだん近づいてくる。
そっと俺の頭に手を乗せて、ガムシャラに頭を撫でられた。

「俺は夜霧。よろしくな、朝日奈くん」

グシャグシャと撫でられた手を払い除ける。
お陰で髪の毛がありえないほどに飛び跳ねた。
朝のヘアーセット十分間が一気に無駄になった。

「よろしくも何も、なんでよろしくしなきゃいけないんですか」

乱れた髪の毛を直す。
もともと癖のある髪の毛なので、中々直らない。

「朝日奈くん、今日暇?」
「毎日大概暇ですけど、なんですか?」
「これからバッティングセンター行かね?」
「行きません」

夜霧と名乗ったヒーローもどきは、なんでだよー、と言って頬を膨らませた。
何歳か分からないが、(たぶん)大人がやっても可愛くない。

「暇なんだろ?付き合えよ」
そう言うや否や、髪の毛を直している俺の手を掴んで引っ張る。

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