正義のヒーロー
「ちょ、なにするんですか!」
「バッティングセンターに行く」
「はぁー!?」
強制的にどんどん歩かされる。
新手の誘拐かもしれないなどと馬鹿なことが過った。
色々な可能性が、頭の中を巡った。
そういえば高校二年の時、誘拐事件に関わったなぁ。
あの時は救世主だとか探偵だとか、いろいろ言われたけれど、そんな格好付けたことに気を使うほど余裕はなかった。
ヒーローなんてどうでもよくて、ただ助けたいの一心だった。
あまりにもきつく掴まれた腕に痛みを覚え、そこで俺の考えは途切れた。
「――――っい、痛いですよ!逃げないから、放してください」
「ダーメ。放したら逃げるかもしれないじゃん」
そう言うと、握られている力を緩くなった。
今なら振り解いて逃げられるだろう。
でも、俺はそうしなかった。
心のどこかで、こいつについていきたいと感じている。
ヒーローじゃないかもしれない。
でもヒーローかもしれない。
何かに巻き込まれたのかもしれない。
平凡な日々が、変わるのかもしれない。
色々な可能性が、頭の中を巡った。