正義のヒーロー
「もし俺が残り二十球目もホームラン打ったら、明日も遊ぼうぜ」
嫌ですよ、と言いたい。
でも、口を開くと、違う言葉が出てくると思った。
「なんだよ、黙りこくっちゃって…」
夜霧が速度百六十キロのバッターボックスに入る。
今だに俺は何も言えないままだ。
訳も分からず、今日知り合った男に明日も会うなんて、どこか納得できない。
でもそれは、主人公の特権かもしれない。
理由なんて二の次で、巻き込まれてから説明を受けるもの。
…とか、そんなうまい方向にも考えてしまうので、はっきり断ることができないだ。