正義のヒーロー




話をしていると、時間はあっという間にすぎていった。
私は五十メートル走には出ないのでのんびり椅子に座っていた。

まぁくんは十番目に走る。

パーンと盛大な鉄砲の音が鳴って、始めの組が走っていく。
私は同じ赤組を応援した。

そうこうしている内に、十番目だったまぁくんが、あっという間にスタートラインに立っていた。
すっかり応援に夢中になって席を立っていたから、あわてて戻る。

そしてカメラをかまえて準備した。



「よーい…」
先生が大きく手を上げて、鉄砲に指を入れた。

レンズから片目でまぁくんを覗く。

まぁくんは一番左端。
私から見て一番手前にいた。
まぁくんの隣には、隣のクラスで一番速い子がいる。


左足を後ろにして、右腕を前に突き出していた。
私はその姿を一枚、カメラにおさめた。



パーンという音と同時に、まぁくんが飛び出した。
すいすいと走っていくまぁくんはすごくキレイだと思った。

走っている姿も写真にのこす。

隣の速い子より、まぁくんの方が速かった。
本当に、一番だった。


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