正義のヒーロー
でも、その時、
まぁくんが倒けた。
すいすい走っていたまぁくんが、そのまま真直ぐに地面に倒れていった。
いきおいがあったから、まぁくんは手をつくより先に、前に倒れた。
その倒れ方はあまりにも自然で、走って倒れるということがあたりまえに感じる。
たぶん他の人もそう感じていたと思う。
こけた時の、砂のこすれる音がはげしく聞こえた。
三十センチほどすべってから、まぁくんが手をついた。
その隙に、他の子がまぁくんを抜かす。
もう一番は無理だ、と私は思った。
「まぁくん!」
しかし、隣の速い子がまぁくんを抜かすと同じくらいに、まぁくんが立ち上がった。
思わずカメラのボタンを押すことを忘れてしまう。
隣の子は速い。
でもこけたまぁくんの方がもっと速かった。
まるで倒れたことがなかったかのように、すいすい走る。
そこでカメラの存在を思い出して、ボタンを押した。
カメラに、両手を上げてゴールするまぁくんを残した。