正義のヒーロー




でも、その時、


まぁくんが倒けた。




すいすい走っていたまぁくんが、そのまま真直ぐに地面に倒れていった。
いきおいがあったから、まぁくんは手をつくより先に、前に倒れた。

その倒れ方はあまりにも自然で、走って倒れるということがあたりまえに感じる。
たぶん他の人もそう感じていたと思う。

こけた時の、砂のこすれる音がはげしく聞こえた。


三十センチほどすべってから、まぁくんが手をついた。
その隙に、他の子がまぁくんを抜かす。

もう一番は無理だ、と私は思った。


「まぁくん!」


しかし、隣の速い子がまぁくんを抜かすと同じくらいに、まぁくんが立ち上がった。
思わずカメラのボタンを押すことを忘れてしまう。


隣の子は速い。
でもこけたまぁくんの方がもっと速かった。

まるで倒れたことがなかったかのように、すいすい走る。


そこでカメラの存在を思い出して、ボタンを押した。



カメラに、両手を上げてゴールするまぁくんを残した。



< 39 / 59 >

この作品をシェア

pagetop