正義のヒーロー
「あの、急に訪ねてしまい、申し訳ございません」
太陽さんが言った。
女の人が綺麗だから、緊張しているような気もした。
「うちの庭にどのような用件で?」
「実は、ここの空き地に木が生えているのか確かめたいのです」
「木?」
女の人の顔が少し歪んだ。
おかしなことは言っていないはずだけど…。
僕も思わず、心の中で顔を歪めた。
「私たちは、ここにある木に用があるのですが…。木はありますか?」
太陽さんが、さっきよりも積極的に言った。
「…さぁ、どうかしら」
「確かめさせてください」
はぐらかそうとする女の人の返事に、間髪を容れずに詰め寄る。
さっきよりも、女の人の顔が歪んだ。
どうやら僕が話す度に歪むらしい。
美人と話しているのに、気分が悪くなるのは、なんだか損をしている気がした。