正義のヒーロー
「じゃ、行くか」
「あ、はい」
初対面のはずなのに、先に夜霧が道を歩く。
偶然と思ったが、俺の家へ向かう道で合っている。
ちょっと不審に思い、一歩下がるようにして後に続いた。
すると、やはり暗がりの小道に曲がろうとした。
「そっちじゃないですよ?」
「あ?こっちの方が近道だろ?」
「もう10時ですよ?大通りを歩いた方が安全です」
「だーいじょーぶ、大丈夫!何のために俺が送ってやってんだよ」
そう言って、暗い小道に夜霧が消えた。
やっぱり裏があるのかと後をついていくのを躊躇ったが、しばらくすると奥から話し声が聞こえた。
仲間を待機させていたと思い、引き返そうとした。
『ぐはっ!』
だが、鈍い音と同時に低い叫び声が聞こえ、思わず足を止める。
小道を見るが、薄暗くて通りがはっきり見えない。
『げふっ!!』
また鈍い音が響き、叫び声と何かが落ちる音がした。
何が起きているのか全く分からない俺は、その場から動けないでいた。