正義のヒーロー









何回か同じような音と声が繰り返され、静まりかえったところで夜霧が出てきた。

「教育が行き届いてないガキ共に制裁を与えてやった」

その一言だけ言って、また小道に入ろうとする。
意味が分からなすぎて言葉が出ない。


「行こうぜ。23時になっちまう」

バッティングセンターに連行したように腕を引かれる。
払うこともできるはずなのに、おとなしく連れられてしまうのは夜遅い思考が鈍いからだということにしておこう。




小道に入ってだいぶ目が慣れてきたところで、道のあちこちに何か転がっているのが見えた。
ゴミかと思ったがそれらは微かに動いており、よく見ると人がうずくまっている。
ゴミだなんて、まったく失礼だ。

体調が悪いのかと思い、思わず声をかけようとした。


「話しかけようなんて思うなよ」
コチラは見ずに、無機質な声音で言われる。
真っ黒な背中が、一瞬怖いと感じた。


カランカランと下駄が鳴る。



夜霧に対する不審は拭えないものの、こんな暗闇にうずくまっている人と一緒にいるのは嫌だ。
何より、俺の家の方面はそっちなのだから、ついていくしかない。

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