正義のヒーロー
「……な、何があったんですか?」
勇気を持って聞いてみると、立ち止まりこっちを向いた。
そして不敵に笑う。
反射的に俺も足を止め、暗闇に浮かび上がる白い歯が動くのを待った。
夏の湿った暑さが、じっとりと身体にまとわりつく。
「ヒーローが悪者を倒しただけだよ」
「へ?」
「偉そうに人の道を塞いで、金を要求してきやがった。カツアゲをする時は獲物を見極めろっての!」
「カツアゲ自体よくないですから」
「とにかく、こいつらが掴み掛かってきたから、返り討ちにしたまでだ」
ケタケタと笑って、わざとらしく下駄を鳴らしながら歩いていく。
その後ろ姿を見て、俺は数分前に思った言葉を撤回しようと思った。