あなたには聞こえますか…………
「うちね、お父さんと姉が火事で死んじ

ゃった後にね、一回だけあの人に会った

んだ。

その時さ、もう既にお父さんと離婚もし

てたし、あの人には家庭も新しくあった

んだ。私たちから離れて、お金持ちの人

との新しい生活がね……

でもね……

どこか、うちの中ではまだ期待があった

んだよね。

何か母親らしいことを、するのかなぁっ

て。うちを心配したり、お父さんの為に

涙を流す感情があるのかなって……

でもね、まったくそんなのなかったよ。

まったく……

元気でねって、ただ言われただけ。

お父さんの話なんて、出てもこなかった

しね……」



花梨は、悲しそうな表情で話しを続けて

いた。







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