あなたには聞こえますか…………
「やっぱり同じ……」



そう呟く雪が見る現場には、今日頻繁に

起きている救急要請と同じように、動か

ない患者の姿があった。



この患者は、死後数日が経過しており、

病院には運ばずに、事件性がないかを警

察へと引き継ぐ形として扱われることに

なる。




通報したのは、その動かなくなった状態

で息絶えている者の彼氏だろうか。



必死な形相を浮かべながら、雪に駆け寄

り話しかけてきていた。



「俺じゃないから! 部屋を見に来たら

こうなってて……

俺じゃないから! 本当に俺じゃないか

らな! 信用してくれよ!

なぁ……俺、捕まったりしないよな?

大丈夫だよな? なぁ……?」




遺体のある部屋には、そう必死に叫ぶ者

の姿が、虚しく響き渡っていた。


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