あなたには聞こえますか…………
(恋人が死んでると言うのに、我が身を

かばうことばかりを口走って……

そんなのは恋人とは、言わないよ)



そう頭の中で考える雪がいた。



しばらくして、警察官が現場に到着して

いたのだ。




「お疲れさまです」



雪は現場に着いた警官に挨拶をし、内容

を伝えて帰ろうとしていた。



「お疲れさん。まったくこんなんばかり

やな。

ろくな死に方しとらんな。最近は。

おかしな世の中になったもんや。

さっさと終わらすかな、まったく……」




その警察官がぶつぶつ話しているのを聞

いていた雪は、警察官に何か言おうとし

たが、無駄な時間になりそうなのを察し

車内に帰っていった。



「遺体の前であんな言い方せんでもいい

のに」



雪がそう呟いている中、その時も室内か

らは、男性の無実を訴える叫び声が、か

すかに聞こえていたのだ。


< 34 / 397 >

この作品をシェア

pagetop