あなたには聞こえますか…………
雪は、ゆっくりとうつろな表情で歩き出

していた。


「あるわけないよ……

そんなの……

花梨は、ここにいるんだから……」



押し入れをゆっくり開くと、隅には

寂しげな色をした壺があった……




「それだよ……雪さん……

うちはその中にいるよ……



それに雪さんが置いたんだよ……

その事を思い出さないように、蓋をする

ように、自然と雪さんはそこを開けなく

なってた……

自然と心に蓋をしちゃったんだよね……



うちが生きてる時に買った枕も、その押

し入れにそのままだった……


取りに行けば、気づくかと、少し思って

た……

でも……雪さんはうちの入った骨壺の方

へは目を向けなかった……


雪さんの心が完全に悲しいことから、

拒否してたんだよね……





あと……

うちがいたマンションも雪さんが片付け

てくれたんだよ……




雪さん、ごめんなさい……


雪さん一人にしてしまって……

ごめんなさい……


もう…………

取り返しのつかないことだけど……



本当にごめんなさい……」


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