あなたには聞こえますか…………
「もういいじゃん! テレビは!

雪さん、話そうよー!」



テレビに集中していた雪に、花梨がかま

ってほしそうに、話しかけてきた。



「ん。あぁ……」



「もう! 今は余計な事考えずに! 最近

あまり一緒にいれてないんだからさ……」




寂しそうに声を出す花梨を、雪は見つめ

た。



そうだよな……最近あまり会えなくて寂

しい思いばかりさせてるよな……

そう考え、雪はテレビを消すのだ。



「ごめんごめん、話そうな! 花梨!」



それからその日の夜まで、二人は音の話

をすることもせずに、二人だけの空間を

有意義なものにしていた。



世の中の騒ぎから、このときだけは安心

出来うる時間になっていたのだ。



しかしそれは、束の間の時間にすぎない

のである。




翌日、出勤した雪は今までの現場数とは

比べ物にならない多くの現場に行く事に

なったのだ。




そして現場数と比例するように遺体の数

は今までの比ではなかったのである。




サイトでの事件は、ただの始まりに過ぎ

なかったのだ。

雪はそれをしばらくして、痛感させられ

てしまうことになる。



< 67 / 397 >

この作品をシェア

pagetop