fingertip
『ふふっ・・・やっとあんたがいなくなってくれて、せいぜいするわ』



えっ・・・?


どこからか、不敵な声が聞こえた。


この声・・・



『あんたが、親友だからって私にベタベタくっついてきてうんざりしてたのよ!これでやっと解放されるわ。他の友達ともお喋りできるし』




ふ、風佳・・・⁉︎


えっ・・・。

頭の整理がつかないよ・・・?



私は、風佳に触れていた手を自分の方へ引っ込めた。




「美紅・・・どうしたの?」



私が手を引いた事にびっくりしている
風佳の一見優しそうな声も
今は不敵に感じる・・・。




「いっ・・・いやっ・・・」




なにをしてもいいのかも分からない。

涙も消えて、
ただ呆然とカタコトに言葉を話すだけ。



「あっありがと・・・。でも、あの、
えっと・・・ごめんね。同じクマのキーホルダー、他の友達からもらってて・・・」




おどおどと、嘘をつく私。

少し罪悪感を感じた。


「あ、そうだったの?ごめんね」



「だからっこれは、風佳が持ってて?」



「・・・うん」



納得した様子の風佳を見て



「あっ、お母さんに早く帰ってきなさいって言われてたんだっ!ごめんね、またどこかで会えるといいね!じゃあね」



なんて、嘘ついて走って逃げた。


風佳の返事を聞く前に
早くその場から逃げたかったんだ。


涙が出てきた。

この涙は、悲しい涙かな・・・。



だって、風佳は私を親友と思っていなかったんだもん。

きっとウザいって思ってたんだね。



なんでだろ、涙が止まらない・・・。



廊下を泣きながら走るなんて
カッコ悪い。

でも、気持ちが止まらなくて胸の中の
何かが壊れたような感じ・・・。


そのまま私は、学校を出た。
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