ベランダ越しの片想い
ベランダ越しの片想い




わたし、隅野 咲歩(すみの さきほ)には生まれた頃から一緒のハイスペックな幼馴染がいる。



彼は帰宅部になって二年目なのに、体力は中学の時からそんなに落ちていない。

持ち前の運動神経で大抵のことはこなせているらしい。



勉強だって、進学校じゃない桜野高校にしてはなかなかの学力を持っている。

私の方が勉強時間は長いはずなのに、どうしても越えられないの。



その上見た目もいい。

明るい茶髪は短く切りそろえてあって、爽やか。

華やかな笑顔でその場の空気を暖かくしてくれる。

そして、瞳は丸く優しい。



幼馴染で育つ環境は似たようなものだった。

ところが、わたしは人見知りが激しくて、コミュニケーションなんてとうの昔に放棄して。

黒髪ストレートのショートカットの長い前髪から覗く瞳は鋭く、高い身長も冷たい印象を与えてしまう。



可愛らしさとは無縁のわたしと違って、ムードメーカーの彼はいつも笑顔でクラスを引っ張って行ってくれる人気者だ。



彼の名前は川崎 晃(かわさき あきら)。

わたしの好きな人。



アキは約三ヶ月前の四月に、一年生の頃から。

つまり、一年間も思い続けていた相手にふられた。






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