ベランダ越しの片想い
────こういう時、いつもわたしはひとりだということが楽だと思う。
友だちがいないから、どんな時でも自由に動き回れる。
変な牽制がないし、あまり知られていないけど幼馴染という立場もあって、アキのそばにいたって問題ない。
中学の時のように、人見知りの激しいわたしをアキが自分の友だちの輪に入れて……という楽な友だちづくりをしなくなった途端、ひとりになった。
それはあからさまよね、とも思うけれど、仕方ない。
アキは清水さんひとりを気遣うので手一杯だし、わたし自身はつまらない人間なんだから。
最近の人はひとりも沈黙も嫌いらしいけど、わたしは好き。
アキとの間に会話がないのは、特に。
暗い階段に小さい窓から光が差しこんでいて、そこだけは綺麗に見える。
埃っぽくて汚いはずなのに、綺麗なの。
なにも言わずにそばにいて、とうとう予鈴のチャイムが鳴ったところでアキが息を吐いて顔を上げた。
「戻ろうか」
笑ってみせる彼に頷いて立ち上がり、スカートをパンっとはたいた。