ベランダ越しの片想い
*
「え、咲良ってばまだ初デートしてなかったの⁉︎」
「わ、ちょっと、しーっ!
そんな大きな声で言わないで‼︎」
慌てて声を小さくするようにジェスチャーをする清水さん。
そんな風に手をパタパタしてみせても、もうクラス中に聞かれちゃっているのにな。
清水さんの彼氏の話が聞こえてくることに慣れてきた今日この頃。
みんなしてお弁当を口に運びながら彼女の話に耳をそばだてていた。
「べ、別に初めてじゃないよ。
放課後によく駅前でお茶したり、勉強教わったりしてたもん」
「でも一日中、一緒にいるのは?」
「う。その、初めてです……」
なんてゆっくりペースなお付き合い。
約3ヶ月にしてようやくってどうなのかしら、それ。
「でも咲良が幸せそうでよかったよ」
「幸せにして貰うんだぞー!」
「いっぱい、いっぱい、して貰ってるよ」
そう言った彼女は誰から見ても幸せに包まれていた。