ベランダ越しの片想い
その時、視界の端でアキがお弁当を食べ終わったところで、友だちに声をかけて立ち上がったのが見えた。
浮かべている表情まではわからず、それが余計に気になる。
「そういえばデートはどこに行くの?」
「あ、それあたしも思ってた」
「あのね、植物園に行くことになったの!」
「……それって微妙」
そっと教室から抜け出す彼。
自分で作ったおかずの鳥肉のチーズピカタ。最後の一欠片を口に放りこむ。
お弁当をわたしも仕舞い、追いかけるように扉に手をかけた。
一瞬だけ重なった清水さんとの視線を断ち切るようにガラリと閉めた。
急ぐことはなく、階段に足を乗せていく。
どうせ彼の居場所は……、
「いた」
屋上前階段だ。
そこに座って俯くアキがいて。
黙ってわたしも隣に腰を下ろした。