キスキすき
起こされて
海に落ちた
あたしは泳げない
あぁ、どうして
あたしの人生これで終わり?
もがいてももがいても
体は縛られてるみたい
苦しくて
嫌だよ
死にたくない
だってまだやり残してることが沢山
たくさん
まだ
あの人に
伝えることも…
息が
苦し、
「んっ…」
目の前には
何も見えないけど、わかる
だってこの光景は今まで何度も
何度も、見てきたから
近すぎて見えないの
これは、
キスの距離
「やっ…!」
そう叫んで目の前の相手を突き離す
唇が離れる
だけどそれでも君は
平気な顔で
「おはよ、麻美」
そう言って笑った
「…………」
唇に
まだ彼の体温が残ってる
…熱い
すると、また顔が近づいてくる
「ちょ、ちょっと!」
精一杯に彼を押す
「…なに」
少し不機嫌になる
でも
でも、それはあたしの方
「朝から何するの!」
「…え、キス」
「な…なんで!」
「したくなったから」
「…………」
ありえない
寝ている隙の不意打ちなんて
おかげで息ができなくて、溺れる夢まで見たのに
この人はそんなの全く気にしない
「いつものことじゃん」
…そう
いつもいつも
いつものこと
けどおかしいよ
キスっていうのは…お互いを愛し合っている、恋人同士がするものだから
おかしんだ
だってあたし達は
付き合っていないから
「そんな、当たり前みたいに…
「当たり前のことじゃん」
「…………」
なんの悪びれもなくそう言う彼は
櫻 洸紀 サクラ コウキ
あたしの
幼馴染