キスキすき










勢いよくあたしの部屋のドアが開かれる



「遅ぇーよ!」




痺れを切らしたような声



また、洸紀が部屋に入ってこようとする





あたしは一瞬止まった



だってあたし今着替えの途中




下着姿……




「きゃーーー!!!!」



「うるっ…せー」



「出てってよ!」



「おい…!


バタンッ




急いで部屋から洸紀を追い出しドアを閉める


鍵をかけて



あたしは、ペタンと床に崩れ落ちた




……もう、やだ







準備ができて家を出ると


外で洸紀が待っていた




あたしは無視して先を歩く



流石のあたしも、今日は怒る




「おい、待てよ」



それでも、洸紀はあたしについてくる



「まさかさっきので怒ってんの?」


「………」




あたしは答えないで足を早めた



洸紀も早める





「お前の裸なんかガキん時から見てるっつの…」



ため息混じりにそう言われて



ほらね



やっぱり




洸紀はあたしのこと



これっぽっちも意識してない





あたしは走った





あたしがどんなに想っても



その想いは届かない




…そんなの、もうわかってる



なのになんで




目が







必死に握っていた手は簡単に掴まれた



だけど走った勢いは止まらなくて


思わず転けそうになったのを




洸紀に受け止められた



そして






また、キスされた





今度は洸紀の方からそっと離される唇




「……なんでっ」



今こんなことするの?





洸紀がキスするのは


いつも変なタイミング




なのに



「だって麻美、機嫌直るだろ?」



そう言われてはっとする




さっきまで…涙を堪えてたのに



驚いてそんなこと



忘れてた




「機嫌も直ったし、もう行くぞ」




差し出された手に



なんの違和感もなく手を伸ばしてしまった




機嫌は直ったわけじゃないけど



もう、いいや




そう思ってしまう




ただ洸紀の手が







もうこんなに



大きくて


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