キスキすき
「寒い!」
そう言ったのはルリ子ちゃんで
あたしではないけど、それは寒くなかったからではなく
ただ寒すぎて声も出せなかっただけだ
ただでさえ寒い冬のグラウンドで半袖半ズボンなんだから当たり前だけど
これからこのグラウンドを30分間、ぐるぐる走り続けなくちゃいけない
運動ができないあたしにとっては、過酷な授業だ
はぁ
やっぱり、走るまでもなく辛い
「まぁ、一緒に頑張ろ」
ルリ子ちゃんのその一言で、あたしはなんとか正気を保つ
ルリ子ちゃんは余裕だなぁ
当たり前だけど
やっぱり運動できるって得だよね
運動できる人には、できない人の気持ちはあんまりわかんないんだろうなぁ
バレーでも、ボールをただ打てばいいと言われるけれど
ただ打って、変な方向に飛んでっちゃうんだから
結局ああいうのはセンス
あたしには最初から無理なのよ
「あ、先生来た!行こ麻美」
ルリ子ちゃんに呼ばれて急いでグラウンドの中央に集まる
こういうネガティブ思考もダメなんだよね
と、自分で自分を諌めながら
ルリ子ちゃんの明るい声に気持ちも流される