キスキすき







「麻美、行こ?」



「あ、え?」



「最初にアップでみんなで一周だって」



「…あ、そう」



「もー、ちゃんと聞いてなよね?行こ」



「あは、うん」



ほんと、しっかりしないと



洸紀のことばっか考えて、馬鹿みたいだ



いい加減、自立しないと



諦める準備


しないと




「よし、頑張る」



「お、珍しく麻美がやる気」



「あ、うん」



「あたしも頑張って走ろ!」



そっちの意味では無かったけど



「ルリ子ちゃんは頑張らなくていいよ、てか頑張っちゃだめ」



ルリ子ちゃんが本気出したら、あたしは追いつけないんだから




「えー?なんでよー?!」



ルリ子ちゃんがわざと口を尖らせて見せる



わたしはその可愛らしい仕草に「いいから」と釘をさし



みんなで同じスタート位置につく



まだただのアップだから、先生の



「よーし、じゃあいいぞー」



という、なんとも緩い合図で、一斉にみんな走り出す



集団で団子になって、スピードは本当に走ってるか歩いてるかわからないほど



それでもあたし達は集団の後ろの方をのろのろと走った



ルリ子ちゃんはあたしに合わせて、だ



洸紀は…



あたし達より後ろの方で、男子とふざけながら余裕で走って…歩いてる



あれ、全然歩いてるよね?



歩いて普通に追いつくんだ



ていうか、先生何も言わないの?



「こら男子ー!アップでもちゃんと走らんとペナルティだぞー」



と思ったら、先生から速攻で注意がかかった



「やっべ」



小さくても、後ろからでも



その洸紀の声だけちゃんと耳に入ってくる



そしてだんだん近づいてくる足音



あれが洸紀のだって



すぐわかる




あれ、やばい



結構近づいてない?






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