キスする顔さえ美しい


見てはいけないものを見た気がして、とっさに隠れてしまった。

今思えば、この時に平気な顔をして出て行ったほうが良かったのかもしれない。



リカ先輩が扉に鍵を掛けた事を確認すると、戸田課長は待ちわびてたかのように彼女を激しく抱きしめた。

リカ先輩もそれに応えるように課長の首に腕をまわし頭を抱き寄せる。


まさか、と思った次の瞬間。

ふたりは貪るように深いキスをした。


私は、棚の影に隠れながら茫然とそれを見つめてしまった。


驚き。衝撃。けれども。


貪欲に彼女の口内を楽しむ戸田課長の横顔を美しいと、私の心は異常なまでに感動していた。



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