いつか、また
「修……修弥の馬鹿が上京するって言い出したのは、今年に入ってすぐだったんだ」
彼女達の通う学校は2年次(或いは3年次)になったらすぐ希望進路を決めることになっている。
「周りはすごく反対だった。……上京しないでもこっちにだって劇団はあるし、その劇団の研究生としてやっていったらいいんじゃないかって」
一言一言、噛み締めるように紡がれる言葉に少女はただ頷く。
「…………話は変わるけど、わたしとあいつは幼稚園からの付き合いでさ……あいつの考えならなんでも知ってるしわかってるような気持ちだったのに・・・」
言葉を切りウェイターを呼ぶ希緒。彼女はいつか花奈が頼んだものと同じものを頼むと溜め息を吐いた。
「・・・ほんとはね、あいつの夢を応援したいし、誰よりもいちばん認めてやりたいんだ」
呟くように言われた言葉は再び訪れた沈黙に消える。
触れたら今にでも折れてしまいそうな、霞に舞う花弁のような希緒の様子に少女は…
「……です」
小言で何事かを言うと真っ直ぐに目の前に座る女性を射抜く花奈。
「・・・好きです、センパイ・・・」
唐突な告白に希緒は愕然とし、訝しむように少女を見詰めた。