いつか、また
小さく息を飲む音が、隣から聞こえた。
見ると希緒はなにか思い詰めたように俯いている。
「希緒、君にとっては嫌な話かもしれない。でも、ボクや花奈、そして君のために必要なことなんだ」
紡がれる言葉は重く、普段の修弥からは想像もつかないぐらい沈んだ、けれど芯の通った声が響いた。
「・・・ボクは、文化祭が終わったら、すぐ、上京する」
長い、長い沈黙の中漸く発せられた言葉にふたりはただ無言で答える。
「……」
「そんな顔しないで」
花奈の隣に立つ希緒は、これ以上ないぐらい深く傷付いたように青年を見詰めていた。
「希緒と花奈には、なんで上京するのか理由を話してなかったよね」
片付けたばかりの椅子を取り出しゆっくりと腰を沈める。その姿は、青年の決意が揺るぎないもので、もう何を言っても青年を止めることは出来ないということを暗に示していた。