いつか、また


「去年、ここのサークル長をやっていた先輩を覚えてる?」


落ち着き払った声で問われ、希緒は息を飲む。


「・・・美香(みか)先輩・・・」


「そう、美香先輩。……希緒はこの人のこと苦手だったよね」


懐古するような声音で言われ、希緒は顔を顰めた。


「美香先輩が東京にいて、劇団に所属してるのは知ってる?」




去年、希緒と修弥が1年生だった頃、美香という人がこのサークルを纏めていた。
美香は演技に関して決して妥協を許さない正格で、当時のメンバー達は皆公演1ヶ月前には泣きを見た。




「・・・それは、知らなかった。……何処の劇団?」


そのスパルタ指導のいちばんの餌食になったのが、希緒だった。


「「劇団『竜胆』」だったかな? そこでキャストとして活動してるって」


「・・・まぁ……あの先輩なら元気でやってるでしょう・・・」


苦笑い気味に希緒は言うと隣に立つ少女を見詰める。


「…………あのスパルタ指導を受けたわたしと対等に渡り合ったやつなら此処にいるけどね」


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