いつか、また
舞台上のふたりを見ながら、修弥はおもむろにスマホを取り出した。
「……もしもし・・・、……プリンセス?」
着信画面に表示された名前はかつてスパルタ指導で恐れられた人のものだ。
『久しぶりねエンド。・・・貴方、今日こっちに来るんでしょう? 今は学校?』
今日が文化祭だと伝えていたことを思い出し、受話器越しに頷く。
「舞台が終わったら出立するつもりだよ。……今年は、希緒がメインだから」
『……。っ!? ・・・な、何よそれぇっ!! その舞台ちゃんとムービー撮ってるんでしょうね!?』
「プ……先輩煩い……それに、ボクは嫌だよ、この変な呼び方」
耳元で叫ばれ、鼓膜がきーんとする。すると美香はひとつ咳払いをした。
『あら、折角付けてあげた渾名なのに気に入ってないの?』
受話器越しなのに実際に落ち込んでいる様子を想像して含み笑いをする。
「だって恥ずかしいよ。……ま、美香先輩は我がサークルの絶対王女だから逆らわないけどね」
『? ・・・まぁ、私が絶対王女ってわかってるなら別にいいけど。……そっちの空港に着いたら連絡頂戴? こっちに来る時間に合わせて迎えに行くわ』
それじゃあ、それだけ言うと勝手に切られる電話。修弥は暫くその体勢でいると出入口付近にいるメンバーに声を掛けた。