いつか、また
何処か物悲しさを帯びる瞳は、少女を捕らえたまま微動だにしない。
互いに見詰め合ったまま沈黙が流れ、再び花奈の台詞が紡がれた。
「・・・わたしは、このまま飼い殺されるのも、鳥籠で死ぬのも嫌。……留菜、わたしも連れて行って。わたしも、あの大空に羽搏きたい」
その言葉に込められた想いに、希緒ははっとした。そして少女を見詰めると、ひとつひとつ確認するように言葉を紡ぐ。
「・・・駄目だよ、美玖。美玖はあたし達に、あたしにとって必要な存在。だから、此処で待ってないと・・・」
もう少しでこの劇も終わる。
会場には、心地よい緊張感と静寂が漂っていた。
「……美玖、あたしは少しの間この「鳥籠」を離れる。だから、いつか帰ったら、もう一度笑顔で迎えて」
「留菜……っ!!」
花奈は叫ぶと希緒に抱き着く。
台本には書いていなかった行動に驚きつつもふたりは演技を続けた。
「うん、待ってる。・・・例え何年、何十年掛かったとしても、ずっと、ずっと・・・」
言葉を切り、顔をあげる美玖(花奈)。その真っ直ぐで純粋な瞳に映ったものを、希緒は見逃さなかった。
「大好きだよ、留菜(希緒)」
互いに見詰め合い、どちらともなく抱き締め合う。やがて緞帳が降り、割れんばかりの拍手が会場を包んだ。