いつか、また
「・・・き、聞いてないよ、こんなの・・・」
舞台に上がった修弥は、ふたりの主役と客席からの視線を痛いほど浴びていた。
「サークル長、挨拶」
言ってマイクを託すと自分の仕事は終わったとばかりに舞台袖に戻るふたりの主役。
「……こんなん、ボクのキャラじゃ……」
周りより目立つのが嫌で、その性格を変えたくて、このサークルに入った。けれど此処には自分なんかよりもすごい人が沢山いて、やっぱりこの性格を変えるなんて無理なんじゃないかと思ったことも、1度や2度じゃなかった。
「……えー、と。本日はお忙しい中、本当に」
「団長、それさっき希緒が言った」
司会者の鋭い突っ込みを受け、客席から笑い声が漏れる。舞台袖を見ると呆れたように首を竦める希緒と胸元で小さく手を握る花奈が目に付いた。
「……皆さん、本日の劇はお楽しみ頂けましたでしょうか? この劇は先程花奈も言っていた通り、見えない何かに囚われながらも生きている人達をテーマにしたものです」
客席から漏れていた笑い声はいつしか止み、会場に響くのは修弥のスピーチだけになる。
「自分自身に、無意識に制限を掛けていることが、皆さんきっとあると思います。現に、ボクもこのサークルに入る前・・・入ったあとも、制限を掛けてばかりでした」