いつか、また


訥々と紡がれる言葉は静かに希緒達の胸に響き、希緒は目蓋を閉じて修弥の声に聴き入った。


「ボクは、本当は目立つのが嫌で、いつも人の影に埋もれて、こんな自分が嫌いで・・・でも、この学校に来て、このサークルに入って、希緒やプ……美香先輩に会って、少しずつ、本当に少しだけど、変われたように感じて・・・」


言葉を紡ぐ度に学校生活での様々なことが甦り、視界がぼやける。


「……ボクは今日、東京へ行きます」


涙が零れないように真っ直ぐに会場を見詰めて言うと、客席から微かなどよめきが広がる。修弥が言葉を繋げようと口を開くと


「本当はまだ認めてないんだけど……でも、貴男には貴男なりの考えがあるんだろうし」


「それに、修センパイがいなくても私達は大丈夫って、見せ付けたいですし」


舞台袖から出て来た主役達は言うと修弥からマイクを奪う。


「今日は修弥のため、そしてわたし達のために来てくれて、本当にありがとう!」


「ステージ発表はこれで終わりですが、外では沢山の屋台をやっているので是非楽しんで行って下さい!!」


総員集合、という声が響き舞台袖に控えていたメンバー達が集まる。


「ありがとうございましたっ!」


「「ありがとうございましたっ!!」」


客席からの喝采を受け、修弥達の舞台は幕を閉じた。


< 29 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop