いつか、また
「……希緒、センパイ……」
手荷物チェックの時間になり、少女はなにか言いたげな目で女性を見詰め、そして口を開いては閉じてを繰り返していた。
「……時間だから、・・・行くね」
女性はキャリーケースと大きめのショルダーバッグを持ち、検査台の方へと歩を進める。
「……忘れ物……」
突然少女を振り返った女性は荷物をその場におくと何事かを呟き少女の方へ戻った。
「せ、センパイ・・・?」
なにか忘れたのかと口を開き言葉を発しようとした途端
「花奈」
柔らかく、優しい感触が少女の唇に伝わり気付けば女性に抱き締められていた。
「これで、暫くは寂しくないでしょ? じゃあ、またね花奈」
今度こそ、本当に今度こそ検査台へと向かう後ろ姿に少女はあの日と同じ胸の高鳴りを感じた。