いつか、また
「……そろそろ時間だね……」
壁に掛けられた時計はもう20時近くを指している。
「じゃあ、わたし達も帰ろうか」
希緒は言うと伝票を持ってレジに向かう。いつかと同じような光景に、花奈は涙腺が緩むのを感じた。
「……泣いちゃだめだよ」
囁くような声で言われ、花奈は隣を見る。隣ではなんでもないように笑う希緒が、心配そうに少女を見詰めていた。
「な、泣いてないです! ・・・泣いてなんか……」
「花奈・・・?」
ふたりの後ろにいた修弥は首を傾げ少女を覗き込む。その大きな瞳は微かに潤んでいた。
「大丈夫、永遠の別れじゃないし、・・・きっとまた、近いうちに会えるよ」
多分だけどね、少女の頭を撫で笑う。天使の和毛のようにふわふわした髪は、撫でている側の心を落ち着かせてくれた。
「・・・花奈は、ツインテールが似合うね」
屈託なく告げると何処か寂しげだった少女ははにかむように笑む。
「……お客様方、もしご迷惑でなければご一緒にお写真をお撮りいたしますか?」
店員は優しい笑顔で言うと、エプロンのポケットからデシカメを取り出した。
「お願いしようか♪」
「はい・・・!」
「そうだね」
店の中心にある少し大きめのオブジェの前に3人で並ぶ。修弥を真ん中にして店員を向くとカシャ、という音が響いた。