いつか、また
心地好い風を受け、少女は飛行機の外に出た。
「…………やっと着いた……」
最後に東京に来たのは、青年が上京して数ヶ月後だから、確か2年前。その間少女は、卒業してからも演劇が続けられるように演技の勉強をしていた。
「でも、まさか私も選ばれるなんて・・・」
3ヶ月前、突然鳴った電話は暫く音沙汰のなかった、少女の最愛の人物からだった。
『劇団「竜胆」で、もう1回一緒に演劇しない?』
その言葉を聞いた時、少女は最初冗談かと思い、暫く声が出なかった。
「……美香さんがね、貴女なら誘ってもいいって。というか、文化祭のムービーを見て貴女を気に入ったみたい」
含み笑いとともに言われた台詞は、一縷の嬉しさも表していて、何処か現実味に欠けていた。
「修弥も、貴女の演技を見たいって言うし」
「……センパイは・・・?」
漸く紡ぎ出した言葉は、自分以外の誰かのもののように響く。
「わたし? ……勿論大歓迎、というか、わたしも美香さんに言われた時はびっくりしちゃった」
悪戯っぽく受話器越しに言われ、何処か懐古するような声音に言われたことが、段々と現実味を帯びる。
「貴女も、もう進路を決める時期でしょ?」
受話器の向こうにいる女性が真剣な眼差しになるのを少女は感じた。