いつか、また
「返事はいつでもいいわ。・・・じゃあ、またね」
そう言い、明日にでも会えるようなノリで電話を切る女性。通話終了音が鳴る受話器を少女は暫く離せなかった。
それからというもの、少女は『劇団「竜胆」』の公演作品をひとつ残らず調べた。「竜胆」の作品は友情や絆を扱ったものが多く、中でも少女や少年達が主体の作品が多かった。
「じゃあ、上京するのか?」
最後の個人面談で担任から紡がれた言葉は、今まで彼が受け持って来た生徒も上京して行ったことを暗に示している。
「はい。……姫先輩達のいる劇団で、やっていこうと思います」
そう告げた時の担任の顔は、きっと、一生忘れられないものだろう。
「出発はいつだ?」
「・・・卒業式は出席したいので、今年度が終わるまでは在籍します」
そうか、担任はそれだけ言うともう話すことはないとでも言わんばかりに黙り込んだ。
「それでは、失礼致します」
少女は言うと迷わずに教室を出た。
少女達の通う学校は特殊な制度があり、OG・OBから勧誘を受けた場合は卒業まで待たなくてもそちらの方に行くことが出来、以降学校に来なくても良くなる。しかし、少女は卒業してから上京する道を選んだ。