いつか、また
そして勧誘から3ヶ月、卒業式が終わった今日、少女は最愛の人物と尊敬し敬愛する人物達の待つ東京の地へ降りた。
「長かったような、短かったような・・・」
複雑な気分、呟きながらタラップを降りる。すると空港の入場ゲート行きのバスが迎えに来た。
「お嬢さん、隣よろしいですか?」
不意に声を掛けられ顔を上げる。声の主は柔和な微笑で此方を見詰めていた。
「いいですよ、どうぞ」
隣に置いていた荷物をどけ、優しげな男性とともに座る。
上京する前に荷物は全て宅配で送っておいた。今持っているものは貴重品やお土産等だ。
「観光ですか?」
柔和な表情のまま、その人は尋ねる。
「……いいえ……。・・・恋人に、会いに行くんです」
ほぅ、と息を吐かれなにか擽ったくなるのを感じる。男性は何処か楽しそうな笑みを浮かべると、ジャケットの内ポケットから小さな紙を取り出した。
「これは・・・?」
「貴方方も良く知る店のものですよ。……もう着きましたね、さぁ降りましょう」
男性が言うのが早いか、車内アナウンスが目的地に着いたことを告げ、乗客達は降車の準備をする。
「あの・・・っ」
「また、いつかお会いしましょう。……花奈さん」
え、小さく漏れた声は虚空に響き、誰にも届かずに消える。
「お客さま・・・?」
訝しむような声で我に返った花奈は慌ててバスを降りる。すると入場ゲートの向こうで此方を見詰める人物達がいた。